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| 司会:森屋英治 氏 株式会社アークウェイ 代表取締役 |
平鍋健児 氏 株式会社チェンジビジョン 代表取締役社長 |
小井土亨 氏 NPO INETA Japan 理事 |
倉貫義人 氏 TIS 株式会社 社内ベンチャーカンパニー 「ソニックガーデン」代表 |
「後編:日本におけるアジャイル ソフトウェア開発のこれから」
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■なぜアジャイルを広めようとしているのか
森屋 アジャイル ソフトウェア開発をどうして私たちはこんなに熱心に呼びかけているのでしょう? どうですか?
小井土 もともと XP やアジャイルをやろうというモチベーションというのは、やっぱりソフトウェア開発が好きなんですよ。そうやって刺激を受けたものに対して人に伝えたいとか、これまで得たもので自分も変わってきたので、これから変わる人もいると思うし、そういう人に伝えていきたいですね。
森屋 開発の現場では当たり前のようにやっていることがアジャイルではっきりと書いてあって、アジャイルの中にはいいものがたくさんあるので、それを 1 つでもやれば得るものはたくさんあるんですね。そういうのを知ってほしいと僕は思っています。
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平鍋 お客さんへの説明には、アジャイルを使って反復で作っていけば仕様の変更にはいつでも対応しますから、後から変更があるのならばアジャイルがいいですよ、その代わり必ず開発には付き合ってくださいね、とアジャイルのメリットを説明しています。でも本当はそんな説明よりも、一個人としては、まだまだエンジニアの気持ちが抜けていなくて、いいものをいい実装で作りたいからアジャイルをやっているんですけどね。
■米国でのアジャイルの現状
森屋 米国ではアジャイルの導入というのはどうなっているのでしょう?
平鍋 去年の調査だと、事業部長やプロジェクト マネージャといったレベルの人たちがいちばんアジャイル開発手法を推進しているようです。
![]() アジャイル開発を社内で推進しているのは、事業部長や開発部門長がトップ、続いてプロジェクト マネージャ、開発部長、CIO / CTO と続く (出典:「3rd Annual Survey: 2008“The State of Agile Development” 」VersionOne) |
最近だと、IT そのものにビジネスを依存しているドットコム企業がアジャイルをトップダウンで採用している例が増えているようですね。しかもいちばん使われている手法は XP ではなくて Scrum のようです。
![]() 最も使われているアジャイル開発手法は Scrum で 49%、続いて Scrum と XP の組み合わせが 22% となっている (出典:「3rd Annual Survey: 2008“The State of Agile Development” 」VersionOne) |
で、彼らが挙げている導入の障壁というのは「企業風土や変化への抵抗」。そして失敗の理由は「企業のフィロソフィーと合わない」。不安な点は「初期の計画が不十分、管理が不十分」といったところです。
それでも米国のプロジェクトでの採用率はだいたい 30% くらいだと僕は思います。日本は 5% くらいだと思いますが。
森屋 米国で普及率が高いのはオープンソースの影響が大きいかなと思いますね。オープンソースの開発だと、テストがあるのは当たり前だし、反復型の開発なのも当たり前ですし。
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小井土 大企業は QC みたいなカルチャーをもともと持っていましたからね。
■アジャイル、これからの 10 年はどうなる?
森屋 アジャイルの視点から見たこれまでの 10 年は、ソフトウェア工学中心だったものに、新しい要素を吹き込んだ時期、という気がします。では、これからのアジャイルはどうなっていくのか、少し夢を語ってもらえませんか?
倉貫 私は社内ベンチャーの責任者をやっていて、そこでアジャイル開発を用いています。最近思うのは、スタッフのプログラマたちはもちろんアジャイル開発をしているのですが、それは進化したアジャイルなんじゃないかということです。
プログラマたちの仕事はもちろん毎日プログラミングをすることなのですが、それをベンチャー事業の一部としてやっているという自覚があって、そうするとアジャイルだと言わなくても自然に反復ごとの振り返りもしているし、そうしたコミュニケーションをもとに、もっとビジネスをよくしようと自分たちで思ってくれているんですね。
すると、お客さんからのクレームを受けるようなサポートもするし、要望を受けて新機能の開発もしている。分業じゃなくてこれらをプログラマが全部やっているんですね。そしてそのほうが、生産性も高いし、ビジネスに貢献するいいものを作ろうとするんです
大きな会社の良さは分業ができて、それによって効率がよくなったり、スケールして大規模なシステムを構築できたりする、というのが利点なのですが、ソフトウェア開発を分業しちゃだめだと思うんです。いま私のチームがやっているように、全部やる方が生産性も高いし、よいものができる。いまはクラウドとかオープンソースのように、小さな組織でもスケールするソフトウェア開発や運用が行える技術がたくさんできてきています。そうするともう大企業で分業して仕事をするのはやめて、日本中で小さな会社の集まりになればソフトウェア プログラマーは楽しく仕事ができるんじゃないかと思いますね。
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10 年前、20 年前なら、何かを作るためには本当に全部自分で作らなければならなかったけれど、倉貫さんがいうようにオープンソースとか開発ツールとか基本的な道具がすごくそろってきて、ソフトウェア開発をとりまくものもアジャイルに追いついてきたんじゃないかと思います。
その中で自分たちのアイデアを実現して世に問おうとするなら、やはりアジャイル開発を手法として用いるのがど真ん中の方法だと思う。アイデアを世に出して、フィードバックを受けて、さらによくしていく、というループは、ウォーターフォールにはできない。アジャイルはそこにフィットするものだと思います。
倉貫 インフラなんかは、クラウドが出てきたおかげで、必要なときだけ調達すればよくなって、インフラもアジャイルに適応できるようになってきましたよね。
平鍋 自分がソフトウェア開発を職業として選んだ理由は、クリエイティブな仕事で、コンピュータがあれば、作りたいな、使いたいなと思ったものをプログラミングで簡単に提供できるのが面白かったからです。
ところが、大きな会社でのソフトウェア開発のやり方なんかを話していると何で暗くなっちゃうかというと、自分が部品になってしまう。お客様と会話をして、「僕が作りました」「ありがとう」といった言葉をもらうような、作っている実感が失われてしまっているからじゃないかと思います。
アジャイルは作り手が持っているモチベーションと、使い手のニーズが出会うことで、新しい価値や感動を得られる手法だと思っていて、それがいま、クラウドやオープンソースのツールなんかの登場で小さい初期投資で始められてマスに訴えられるサービスを作りやすくなるなど、モチベーションの面も含めて取り組みやすい環境が揃ってきているのではないでしょうか。
そして世界を含めた市場に向かって、日本から受託じゃなく、オリジナルなソフトウェア製品―これは僕が JUDE をやっている理由なのですが−を出してリターンを得る、というような仕組みを回していきたいし、そういう産業構造になれば、いいソフトウェアを作りたい、というようなモチベーションがさらに高まって、アジャイルが活躍できる領域が広がるのではないかと思っています。
最近、もう 1 つ注目されている分野があって、それは UX (ユーザーエクスペリエンス) の世界でアジャイルが再発見されていることなんですね。使いやすいシステムを作るとか、感動させるユーザー インターフェイスを作るのは、ウォーターフォールでは絶対だめで、これは UX 側からアジャイルを再発見してもらった。この分野はアジャイルの新しい事例になるのではないかと期待しています。
もう 1 つ言うと、アジャイルのコンセプトは例えばトヨタ生産方式 (リーン) や、野中郁次郎先生の新製品開発方式 (スクラム) のような日本の製造業のノウハウを体系化したものが多いのですが、日本人はそうした体系化やコンセプトの情報発信が得意ではないし、そういうことをしている人もいないんですね。今後はそういう情報発信ができるような人も増やせたらなあと思っています。
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今日感じたのは、アジャイルをやっている人は熱い人が多いですよね。僕がここに集まってもらった 3 人の方が素晴らしいなと思うのは、自分が気づいたことを人に伝えるという活動をしていること、しかも熱く語っている。今後もみなさんには、いろんな方に影響を与えるような活動をしていただきたいなと思っています。
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<参加者>
司会:森屋英治 氏 (株式会社アークウェイ 代表取締役)
元マイクロソフトのプリンシパル コンサルタント。.NETによるアジャイル開発 (NAgile) の研究やコンサルティングも行っている。本サイト「ソフトウェア開発未来会議」の編集委員。
平鍋健児 氏 (株式会社チェンジビジョン 代表取締役社長)
日本におけるアジャイル ソフトウェア開発手法の第一人者。オブジェクト指向技術、アジャイル開発、ファシリテーションなどのコンサルタント。アジャイルプロセス協議会副会長。
小井土亨 氏 (NPO INETA Japan 理事)
一貫してソフトウェアの開発を生業としテストによる設計とリファクタリングを日課とする実践者。日本 XP ユーザ会 広報担当
倉貫義人 氏 (TIS 株式会社 社内ベンチャーカンパニー「ソニックガーデン」代表)
入社 2 年目でアジャイル開発手法に出会い、いくつものシステム構築案件をアジャイルによって開発してきた事例を持つ。日本 eXtreme Programming ユーザ会 (XPJUG) 会長として XP の普及にも活躍